昔 まだ 私が学生で若かった頃の話。私には姉がいる。姉は私と何事においても対極の人だ。私は感覚人間で、感じるままに生きるのが好きだ。良くも悪くも、社会の常識に囚われるのが好きではなかった。「こうしなければならない」とか「こうあるべきである」とか言われると「どうして 皆、同じ考え方でなければいけないの?」と本気で疑問に思ったりしていた。しかし あまり 言葉にして、反抗したことはない。だから いつも 姉には理解されなかったと思う。言う事を聞かないし、その割には 反抗もしないし、何を考えているのか、分からないとよく 説教された。私は 単純に 私が感じるように生きたいし、自分の人生を、楽しみたいと思っていただけだし、その強い意志は 運良く持っていた。私は損得をあまり考えるのは得意ではない。その気になれば、豚が木に登る勢いで、何でもやる。また 失敗して頭を打たないと、納得しない。姉だけではなく、父母の心配の種だったかも知れない。私が「これをやりたい」と言い出したら、父母は、深く溜め息をついて、諦めるしかなかった。私が一度 言い出したら、必ず、それを行動に起こす。私が英語を勉強したい!と言い出した時、イギリスへ行きたい!と言い出した時、その時代 女がそんな事をして、どうする!!女の幸せは「結婚」だと、皆が 私に不安を感じて、何とか 結婚をさせようと「お見合い」の話も来たが、勝ってに決められた「お見合い」もすっぽかして、行かなかった。姉は堅実で、確実で、真面目で、計画性がある。いつも 父母のことを考えて、親孝行な姉だ。そんな理由で昔から、姉によく説教をされた。それは、今もあまり変わらない。自分では、今は昔に比べると、随分マシになったと思っているのだが。今では 行動に起こす前に、2,3回 考えるようになったから。「どうして行動する前に、もっと考えないの?」「どうして思った事をしないと気がすまないの?」「どうして もう少し計画を立てないの?」「どうして 自分の事しか考えないの?」と。学生時代も姉と私はよく先生にも比べられた。「お姉さんのように頑張りなさい!!」と。周りの人からも、よく 姉と比べられた。私は楽天家なので、内心、全然 気にならなかった。そんなある日 姉から、今度の日曜日 お寿司を食べに誘うから時間を空けて置くように、と命令された。私は「また 説教かな!?」と思ったが「うん」と答えた。指定されたお寿司屋さんへ指定された時間に行くと、体育系の背の高い男性と姉が待っていた。男性は明るくて、人がよさそうに見えた。いつも 説教する姉の顔は、そこになく、ニコニコと満面の笑みを浮かべていた。姉はその男性に「妹です」と紹介し、私に「こちらは近藤剛さんよ」と、いつもより、ワンオクターブ高い、女性らしい声で紹介した。その可愛いらしい声に私は目が点になり、固まった。剛さんはどんどんお寿司を注文し遠慮しないで食べてくれ、と言った。その彼の側で姉は嬉しそうに、楽しそうにニコニコと別人の様に微笑んでいた。今まで見た事のない、かわいい姉に、私は戸惑っていた。
「この後 飲みにいこう!!」と剛さんは私も一応、誘ってくれたが、隣の姉の目が「あんたはもう帰りなさい」と睨んでいたので、「私は明日早いので失礼します。ご馳走様でした。」と2人と別れた。帰路の道筋で、思わず噴出しそうだった。家に帰ると「何?あれ?ネコかぶるにはほどがあると思うけど!剛さん完全に騙されているよ!」と母に言った。やがて 2人は結婚をし、剛さんは義兄さんになった。
結婚直後 自宅でみんなで食事をした時「可愛いと思っていたのに、気が強いのにはビックリしました」と義兄さんはビールを飲みながら、冗談と本気で話し、父や母も大笑いをした。側でバツの悪そうな姉が照れていたのを鮮明に覚えている。当時は分からなかったが、姉は剛さんが本当に好きだったんだな~と今は思う。一生懸命「かわいい女」になり義兄さんと結婚をしたかったんだな~と思う。いつも説教されるけど、「かわいい」な~とふと思う。現在もしっかり者の姉と義兄さんは本当に仲の良い夫婦である。しかし 結婚当初 義兄さんは内心「本気で騙された」と時々、思ったかも知れないと、思うとふっと可笑しくなる。男性諸君 かわいい女にご用心下さいませ。 Y.クッチマン